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書評 「統一協会信者を救え」

著者 杉本誠・青春を返せ名古屋青春を返せ訴訟弁護団

書名 統一協会信者を救え:杉本牧師の証言

出版社 緑風出版

 本書の主要部分は法廷での「杉本牧師の証言」(副題)である。ただし正式の「著者」は、杉本牧師プラス「名古屋"青春を返せ訴訟"弁護団」となっている。本書の印税は全部この裁判へ寄付することに杉本牧師は決めている。

「青春を返せ訴訟」とは、若者たちが統一協会から奪われた日々への損害賠償を求めた裁判である。同じ趣旨の裁判が、いま全国で八件おこされている。(もう一件、静岡のは、和解で終わった。)杉本牧師は、みずから救出した元信者たちのために、こんどは法廷へ出たのだった。

 初めにこの裁判の概要と杉本証言の意義について、弁護士さんたちが簡潔に解説している。つづく第一章「なぜ救出牧師になったのか」と第二章「救出活動の実際」は杉本牧師が原告側弁護団の尋問に答えたものだが、第三章「救出活動は拉致監禁ではない」(これが証言のポイントのひとつ)と第四章「恐るべきマインドコントロール」はほとんど全部、統一協会側弁護士の反対尋問に答えた、というよりそれを見事に切り返した、圧巻の延言である。

 統一協会問題では私自身、過去に三つの裁判で五回、証人席に座ったことがある。反対尋問では何が飛び出してくるかわからない。嫌なものである。ところが本書では、その反対尋問がかえって統一協会のひどさと杉本牧師の信仰・見識の確かさを印象づける結果となっている。これがすべて法廷でのとっさのやりとりの記録であることを、読者は心にとめてほしい。

 第五章「山崎浩子さんの救出に携わって」は書かれた手記である。ここでの統一協会の下劣な脅迫や中傷は、私も体験したものが多い。「山崎浩子さんの救出は、統一協会とマスコミの騒ぎの異常さを除けば、今まで関わった多くの救出となんら変わりはなかった」という結びの言葉が、私にはよくわかる。それからもうひとつ、この救出劇での杉本牧師と「盟友」清水与志雄牧師の一心同体ぶりにも、私の胸は暖まる。こういう人々と同労者であることを、私は誇りに思っている。

(神学博士 JSCPR理事・東北学院大学名誉教授 浅見 定雄 1994年1月 「本のひろば」掲載)

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