日本脱カルト協会

 

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日本脱カルト協会の紹介

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日本脱カルト協会の紹介
2008.5.19

1 概要

  日本脱カルト協会(The Japan Society for Cult Prevention and Recovery)は、1995年11月に設立された。心理学者、聖職者、臨床心理士、弁護士、精神科医、宗教社会学者、カウンセラーそして「議論ある団体」の元メンバーや家族等から構成されているネットワークである。

  この会は、設立当時は日本脱カルト研究会(Japan De-Cult Council)という名称だったが、2004年4月25日現在の名称に変更した。同時に、それまで賛助会員であった元メンバーや家族も会員とした。2008年5月16日段階での会員数は167名であって個人加入である。別に、会報を購読する会員が法人を含めて10名である。

  聖職者には、現在のところ、プロテスタントの牧師、カソリックの神父、日本の伝統仏教のいくつかの宗派、20世紀初頭ころできた新宗教の関係者が入っている。 事務所は東京の隣である神奈川県の大和市内にある筆者の法律事務所にある。しかし、専従事務員や専用電話を持つなどの独立性はもっていない。予算規模は2007年で約524万円だが、大会参加費や繰越金を控除すれば約303万円である。年会費は3000円である。他の収入源は出版物などの販売収入、講師派遣による寄付金や一般寄付金である。1つの団体からの多額寄附は受けず、また公的援助も受けていない。

  この会の目的は、破壊的カルトの諸問題、カルトに関わる個人および家族へのカウンセリング経験についての交流およびカルト予防策や社会復帰策等の研究をおこない、その成果を発展・普及させることにある。この会は、相談機関ではない。しかし問い合わせは多いので、その場合は筆者が個人として、カウンセラーなどを紹介している。

  会員は、研究部会、カウンセラー部会、家族関係者部会のいずれかに所属している。カウンセラー部会は臨床心理士などの公的資格を持つものばかりでなく、牧師・僧侶や弁護士のうちカウンセリングに従事している者も含まれている。会員となるには、会員1名と理事1名の推薦のうえで理事会での了解が必要であり、推薦がなく入会が認められなかった人もいる。

  理事は現在14名であり、2年に一度会員の選挙により7人が選ばれ、このものが更に数名を選出する。理事は理事会を組織し、代表理事を選出し、また日常そのメーリングリストにて業務を決定する。代表理事には1995年からは東邦大学医学部教授で精神科医の高橋紳吾、2003年からキリスト者で東北学院大学名誉教授で神学の浅見定雄、2005年から伝統仏教である日蓮宗僧侶の楠山泰道が就いている。

2 設立の経緯

  1995年3月の強制捜査にはじまった一連のオウム報道では、教祖・麻原の異常性と共に、信者達の想像を絶する奇妙な行動が問題になった。マインド・コントロールという概念で様々に説明された。入信にはじまって教団のメンバーとなり、教祖の命じるままに違法行為を行った彼らの多くが、世間的にはいわゆるエリートであったことも人を驚かせた。

 入信勧誘の際に、ターゲットの精神の不安定化を図って取り込み、やがて社会常識を捨てさせ、全てを教団の論理で行動させ違法行為をすることもいとわない団体がある。それを破壊的カルトと呼ぶ。日本では、もともとメンバーを棒で叩いて死なせるという形での事件、十数人程度の集団自殺、死亡したメンバーの復活を信じて火葬・埋葬もしないという事件などが、以前からあった。

 問題点は、メンバーが心身を壊し人生を無為に過ごすだけではない。家族や関係者らに財産的被害を与え家庭崩壊に導いており、第三者に対して犯罪をおかすこともあった。

  日本での、これら問題の集団としての対応は、1980年代からである。統一協会の霊感商法に対して、弁護士が消費者問題として被害弁護団を作った。その頃、牧師や脱会したメンバーらにが、現役メンバーに対して脱会カウンセリングを始めていた。これによって脱会した元統一協会メンバーは、現在までに数千人になると思われる。

  オウム真理教に対しては、故坂本堤弁護士が被害対策弁護団を結成し、また現役メンバーの親たちが、その助言で1989年「親の会」を組織した。

 1995年6月以降、オウム事件を契機に、これら聖職者、弁護士、カウンセラーや精神科医、社会心理学者らが独自に集い、情報交換をし始めた。

この会は、これを契機にして、同年11月設立された。

3 内部での活動

  会合は、1995年から2003年までは1日間の「交流会」があり、2005年1月まで40回にわたる。1997年からは交流会を含めての2日間の「合宿」も開かれ、現在は2日間の「大会」を年2回開催している。うち1回は年1回の定時総会を兼ねている。2008年3月には富士山山麓の施設にて、第14回大会兼定時総会が開催された。家族関係者部会は、大会と別に年2回ほど集まっている。

  大会のうち、全体会では、カルト問題を生起している諸団体の情報交換、外部講師や内部講師による講演会が開かれる。部会ごとの分科会においては、研究部会が研究成果の交換、意見交換など、カウンセラー部会がケーススタディや研修会など、家族関係者部会では悩み事の交流、更なる情報交換などがされている。また独自に元カルト団体のメンバーだった者が集まる時間をつくり、互いの経験や感情を交流している。

  会員のうち希望者はメーリングリストに入り、日常的に新たな団体についての情報交換や意見交換を行っている。会員には、年に数回、議論ある団体の情報などが郵送される。

4 対外活動

  対外的な「会報」は、年に数回発行することとしているが、未だ14号に止まる。特集したテーマは「世紀末とカルト」「カルトか宗教か」「オウム特集」「自己啓発セミナー」「スピリチュアリティーブーム」「ミニカルト」などである。1000部を発行し、警察庁、厚生労働省、文部科学省、文化庁など国の諸機関にも提供している。

  この会では、ホームページhttp://www.jscpr.org/を設置しており、一部は英語化している。

  カルト問題予防のための活動は次のとおりである。

  2003年3月作成の「こんな勧誘にご用心」というパンフレット(1枚20円)は、大学などに毎年3−4万枚普及させている。1996年発行の冊子「こころの健康づくりハンドブック」は精神科医などに合計3200冊、1998年作成の予防ビデオDVD「幻想のかなたに」は1700本、2003年作成の家族用のビデオ「家族がカルトに入ったとき」は630本を普及させている。まだまだ少ない。

  この会では、2000年以降、対外的に公開シンポジウムと研修講座をそれぞれ隔年で開催している。参加者は毎回2−300人である。

  この会では、2000年頃以降、理事らが、前記の国の諸機関に面談し、カルト問題に関するさまざまな要請をしている。違法行為に及んでいる諸団体の情報提供をし、国に諸々の対策を求めることなどである。

  この会では、これまで法務省などに対して5回、公式に要請している。1996年1月18日、同年9月30日のオウム真理教に破壊活動防止法を適用しないことの要請、1997年5月14日の同教団の受刑者らとの面会などについて配慮を求める要請、2000年2月1日の同教団脱会者支援のための諸施策を講じることの要請、2006年9月15日同教団教祖の死刑が確定した時に弟子12名については死刑としないようにする要請である。

5 会員各自の活動

会員各自もそれぞれの立場で、また他の団体、諸機関で活動している。例えば、カウンセラーは事務所や学校・企業・診療所などにおいて、学者は大学や各分野の学会などにて、弁護士は色々な被害対策弁護団や個別案件にて、聖職者は各宗派での啓発活動などにて、家族関係者は集団ごとの集まりなどで活動している。カルト問題を取り上げるホームページを開いている会員も十数名に及ぶ。

  また、オウム裁判をめぐっては、会員が、カウンセラーとして面会する、弁護人として弁護活動をする、私的鑑定人、精神鑑定人として面会、証言や鑑定をする、また被害者だが被告人の精神状態も知る者としての法廷に出頭するなどし、大きな影響力を与えた。

6 友好団体

  霊感商法被害弁連は弁護士の集まりであり、統一協会による霊感商法を発端として始まっている。が、既に他のカルト団体による法的トラブルにも対処している。当会と人的に重なる部分も多く、友好団体であると言える。

  長野県小諸市にあるNPO法人「いのちの家」は滞在型の元メンバーのリハビリテーション施設であり、友好団体であるといえる。

  その外、議論ある集団ごとの諸団体(エホバの証人、統一協会、オウム真理教、摂理その他多数)や、各宗派やカウンセラーが多く作っているカルト問題関係者の集まりが数十は存在し、友好団体である。

  日本におけるカルト問題への対応は、当会や霊感商法被害弁連、また上記の諸団体と、それらの各メンバーが、大きな影響力を持っている。

  なお、毎年開催されるICSAには何人かが必ず参加している。また2000年11月8日から11日に中国人民大学で開催された「邪教問題国際研究会」には、宗教の自由が確立されていない中国で開催されることから、議論の上、この会としては参加しないこととした。

7 特徴ある研究成果

  この会に特徴的な成果として次の2つがある。

 静岡県立大学准教授の西田公昭を中心として、1999年2月13日「JSCPR集団健康度チェック目録Ver1.0」が作られた。ある集団がどれくらい社会的に健全であるのか危険であるのかを、量的な手法で探るものである。カルト団体かどうかはゼロか100かの問題ではなく、程度問題だからである。

 目録は、日本国憲法の人権規定に基づいて、114項目にわたりチェックし、精緻な評価をできるように作られてある。視点として、カルト問題が宗教問題そのものではなく、集団において心理操作が施され、メンバーや関係者の人権が侵害され、違法行為までをも「良いこと」として継続的にさせる問題だと捉えるからである。
団体によって侵害されている法益が相当に異なること、勧誘手法が異なることなど興味深い。関係者がチェックするものであり、元メンバーと現役メンバーとで評価の差異が大きいものほどよりカルト性が高いともいえる。

  2000年1月22日には「破壊的カルト問題にかかわるカウンセリングにあたる者の申し合わせ」が作られた。これは、カウンセリングの広がりと充実を目指して、家族についてのカウンセリング、本人の脱会カウンセリング並びに脱会後の自立のためのケアーカウンセリングすべてにおいて、カウンセラーの倫理を申し合わせたものである。

以上

 

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